今日のこころ
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小沢昭一の小沢昭一的こころ

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July 17, 2006

大銀座小沢昭一的祭

会場、銀座ヤマハホール。実はここは初めて。エレベーターで7階に上がると、思っていた以上の広い空間に驚く。銀座のビルの中とは思えない。
開演前から場内に度々お囃子の音が流れる。客入れの音楽のようなものなのか・・・。
さあ、照明が暗くなって、幕が左右に開く。
ステージの上に高座。名ビラは「随談 小沢昭一」。
出囃子は、やはり「明日の心」。が、少し様子がおかしい。三味線の音が途中でつっかえる。小沢さんも立ち止まって少し苦笑か。
いきなり余談だが、この曲は三味線で弾くには難しいのだろうと思う。特に、最後の部分。チャチャッチャーン、チャチャチャチャーン、チャンチャンチャンチャーン、という、チャチャチャチャーン、のあたりは、バチが追いつかないのか、どうしてもそこで調子があやしくなる。去年の末廣亭の高座では、そこのところは上手く曲をアレンジしてかわしていた。チャッチャーッチャ、チャーッチャチャッチャ、チャンチャンチャンチャーン、というふうに(こんな書き方でどこまで伝わるかな)。

そういう意味では、今回の出囃子は、正攻法で迫って、あえなく玉砕ということか。
小沢さんは白の着物姿で涼しげ。粋!
高座には、見台、膝隠し。机の上に、湯飲みと扇子、そして話の内容を確認するためか、料理屋の品書きのようなものが見える(ただし、小沢さんは話の途中でそれに時折目を落とすことはあったが、読むようなことはなかったことを付言する)。
小沢さんの声は軽やか、言いよどんだり、つっかえたりすることもほとんどない。調子がよさそうだ。正直、去年の末廣亭で二度聞いたときよりもいい。
あとは、ぼくの記憶にまかせて、思い出すまま覚え書き。
銀座の柳が雨を含んで美しいですね。で、歌いだしたのが「東京行進曲」ですか。
昔恋しい 銀座の柳〜
昔恋しい、ということは、この歌が流行った昭和4年には、銀座には柳並木がなくなっていた(小沢さんは震災で銀座一帯が焼けたから、というニュアンスで言われていたけど、実際にはそれ以前の車道拡張で撤去されたらしい。まあ、どのみち丸焼けになるのだから同じことだけど・・・)。それが、この歌のヒットによって、再び銀座に柳が植えられる。
歌うは「銀座の柳」。植えてうれしい 銀座の柳〜。これは昭和6年の歌。
しかし再び植えられた柳並木も、今度は空襲で焼けてしまった。
敗戦後、みたび銀座に柳が植えられたという歌を、小沢さん歌ってたんだけど、その曲の名前は、何だったんでしょう。すいません、私の調査が及びませんでした。確か昭和22年の歌と言ってなかったかな・・・。
小沢さんが言いたかったのは、歌謡曲もバカにしたものじゃありませんよ、ということで、こうやって銀座の柳の変遷を歌でたどることができるのです。
小沢さんが何か一節歌うたびに、客席から拍手が。でも、それを遮って小沢さん、もっと歌いたいの。
このヤマハホールから、並木通りの方に入ったあたりに、かつて金春演芸場という寄席があって、中学生時代の小沢さんは、たいそう入り浸っていたそうですが。
そこで聞いた○○寅子という音曲師(名字が出てこない。この人の名前は小沢さんの本で見たことがある気がする・・・)。音曲を演る人は小粋なほうがいいんだけど、この人はいかつい感じの人で。それでも「深川」などをいい調子でやってましたよ、と「深川」を一節。
ところでこの人、寅子といいますが、女じゃない、男です。昔は男で名前に「子」のつく人も結構いた。三木のり平さんもそのひとりで、本名は田沼則子(ただし)という。のり平さんは「子」のつく名前だったおかげで、役所の人が名簿から見逃して、戦争に行かずに済んだとか(本当?)。だから、これから子供や孫に名前をつける人は、「子」をつけるといいですよ。また、きなくさくなってきましたからね・・・。

投稿者 hiraking : July 17, 2006 04:07 AM | ブログ演芸
コメント
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こんにちは、以前も小沢さんネタでコメントさせていただいたケズル子と申します。こちらで大銀座落語祭の情報を拝見しまして、先日無事ヤマハホールで小沢さんのお姿見ることができました。
これほどの詳細なレポートは他になく、当日のことを思い出してニヤニヤしながら読ませていただいております。
私はもともと赤線跡や遊郭跡を調べており、また熊本出身でもありましたので、小沢さんの話、大変興味深かったです。
あ、ぼちぼち「小沢昭一的こころ」が始まりますので失礼いたします。レポートの続き、楽しみにしてます。

Posted by: ケズル子 : July 19, 2006 12:12 PM

どうもありがとうございます。先日は無事にチケット取れたのですね。
赤線や遊郭は、調べているというほどではありませんが、私も関心があります。いや、私の場合、理論も実践も、ということですが・・・。失礼。
雑誌「東京人」の2003年1月号はお持ちですか?
「色街慕情」と題した小特集で、いくつかの色街の写真に添えて、小沢さんが文章を寄せていますよ。
あ、この文章、新刊の「老いらくの花」にも収録されていますね。

Posted by: hiraking : July 19, 2006 07:49 PM