
有名店だと思うから、店の紹介はいいでしょう。
さんざん飲み食いして、浅草から秋葉原までタクシーに同乗してきたのは覚えているが、そこからの記憶がアイマイである。
朝起きてカバンの中を見たら、どういうわけか「オール讀物」と「散歩の達人」が入っていて、そういえば両国駅前の本屋で買ったな。その後は、うちまで歩いたんだっけ?

早稲田通りから神田川のほうに続くだらだら坂を歩いて、ほぼ川にぶつかるところ。
このへんにいろいろとお店があるというのは、つい最近まで、うかつにも見逃していた。
初めて入る店。カウンター席と、奥に小上がりの小体な店。ぼくの他に客はいない。というか、店の人の姿も見えない。
カウンターの中に姿を見せたのが、そうねえ、多分ぼくとそうは違わないくらいの年の男性ひとりだったから、もしかしてこの人は店番?などと少々いぶかしく思いつつ、とりあえず燗酒を頼む。
燗付け器にとっくりを漬けて、程なく、いい具合に温まったお酒を出してくれた。嬉しい。
お通しはスープ餃子。変わったものを出すんだなと思うが、これはこれで悪くない。
黒板の品書きを見ると、お刺身がいくつかあるようなので、選びあぐねていると、先ほどの若い男性(やはり、どうやらこの人が主人らしい)が、お客さんのお土産なんですがと、むろあじの干物を出してくる。
干物をかじりながらお酒を口に運んでいると、今度はやつがしらを煮たものがひとかけら出てくる。その次は、これもお客さんが持ってきてくれたスルメイカでつくったものですが、と塩辛が出てくる。
その間、ぼくはお銚子をお代わりするだけ。
お酒はあさ開。ぼくがいきなり燗酒を注文したので、珍しい客だなと思ったそうだ。ここの店の前にやっていたところでは、お酒の銘柄もいくつか揃えていたそうだが、今置いているのはあさ開だけだという。焼酎を飲む客が多いようだ。カウンターの棚を見ると、ボトルキープの焼酎瓶が並んでいる。
しばらく燗酒をやっていると、二人連れの客がカウンターに座って、やはりチュウハイのようなものを飲んでいる。この冷えるのにねえ、と、ぼくなどは思うのだが。
結局、お銚子を3本頼んで、料理は何も注文せず、勘定は2千円。これは安いのではないか。なんだかフシギな気分を味わった夜でした。

* * *
『角永和夫展 「SILK」』
会場: 入善町 下山芸術の森 発電所美術館
スケジュール: 2006年10月14日 〜 2006年12月17日
住所: 〒939-0631 富山県下新川郡入善町下山364-1
電話/ファックス: 0765-78-0621

* * *
『リアル・ユートピア〜無限の物語展』
会場: 金沢21世紀美術館
スケジュール: 2006年11月23日 〜 2007年3月21日
住所: 〒920-8509 石川県金沢市広坂1丁目2番1号
電話: 076-220-2800 ファックス: 076-220-2802

尾崎さんの個展が今日までなので、もう一度見に行ったついでに向かいのビルを覗いたら、藤幡正樹さんの個展をやっていた。
そうかそうか、これも今日までだったかと思って中に入ると、おお、藤幡さん本人が誰かお客に作品の説明をしているところではないですか。
念の為、むろんご本人と面識があるわけでもなんでもない。少し離れたところから、おお本物の藤幡正樹だと胸をときめかせて見ているだけなのですよ。って、おれは変態か。変態ではないかも知れないが、ミーハーだ。
入口に置いてあったポストカードの文章を読むと、
「シルエットを作って交換することが、18世紀に流行ったらしい」
いきなり、この1行目の意味から分からない。シルエットを作って、交換?
ここはせっかく文章を書かれた当人が目の前にいるのだから、どういうことか聞いてみようかと一瞬思ったが、そういう安易なことではヨクナイと考え直し、ウェブで検索してみた。すると、
http://www.f.waseda.jp/kusahara/fromShadow.html
こんなページが見つかったので勉強になる。って、これ草原真知子さんのサイトですか。
しかし、このページで紹介されている、ヨーロッパの都市でシルエット師なる人がパーティーの余興として出席者の横顔を切り抜いて回っていた、という話など、まるで日本の紙切芸みたいじゃないですか。紙切りも、今でこそ寄席で見るものだけど、もとはお座敷芸だったのだろうから。
ただ、寄席の紙切りというと、特定の人の顔というよりは、その時期の年中行事だとか、昔ながらの庶民の風俗に題を取ることが多いのかな。まあ、不特定多数を相手にした寄席で、特定の客の顔を切り抜くというのは、頼む人も勇気が要るか(「何を切りましょうか」「私の顔!」誰か、そういうリクエストをすればいいのに)。
話はどんどん逸れていくが、あれは末廣亭だったか、紙切りの林家正楽さんが高座から題を求めたとき、客席から「ウサマ・ビンラディン!」という声が上がった。
ちょうど9・11後のアフガン侵攻のころだったとは思うが、おいおい、いくらなんでもビンラディンはないだろうと思いつつ見ていたら、程なくして、正楽さんは本当にそれらしく見えるターバン姿の男の正面像を切り抜いたので、その当意即妙ぶりに感心したものだ。
お客に「何でも切ります」と言っている以上、中には突拍子もない題を出してくる人もいることだろう。できません、とか、それは何ですか、というのも格好悪いし、紙切りの芸人さんも大変だ。一方で、ビンラディンをリクエストした客も、もしそういうことを全部承知のうえで題を出したのだとしたら、なかなかやるもんだと思う。
* * *
『藤幡正樹 「Portray the silhouette? 絵画の起源」』
会場: ASK? Art Space Kimura
スケジュール: 2006年10月25日 〜 2006年11月18日
住所: 〒104-0031 東京都中央区京橋3-6-5 木邑ビル2F
電話: 03-5524-0771 ファックス: 03-5524-0772

日本橋のギャラリーパストレイズというところで、恒例のオマージュ瀧口修造展をやっているというので出かけた。
ていうか、つい何日か前まで知らなかったんだよ。今オマージュ瀧口展やってるって。
東京アートビートにも出てないしなあ。美術手帖とかには載ってるのか? しかし、私は毎月美術手帖を買ったり立ち読みしたりしたりするようなマジメな美術ファンではないし。そろそろオマージュ瀧口展の時期かなあとウェブを検索してみたら、偶然すでに会期中であることを知ったのだ。いやはや。
オマージュ瀧口展も今回が第28回だという。すごいねえ。今回取り上げるのは、写真家の大辻清司。というか瀧口マニア的には実験工房の大辻清司。まだやってなかったんだ、という意外感が先に立つ。
会場のギャラリーパストレイズという場所は始めてだ。雑居ビルの二階に上がって、ギャラリーの中に入ると、奥に佐谷和彦氏の姿が見える。むろん、佐谷氏はいち美術ファンにすぎないぼくのことなど覚えてくださってはないだろうが、昨年、前回のオマージュ瀧口展を有楽町のフジテレビギャラリーに見に行ったとき、やはり会場に佐谷氏がいらして、親しくお声をかけていただいた嬉しい記憶がある。今回も、なんとなく目が合ったのをいいことに、ずうずうしくこちらから声をお掛けして、お話をさせていただくことができた。こうして瀧口修造の空気を、間接的にでもいいから吸い込むことができれば、ぼくはいいのだ。
今回展示されているプリントは、大辻氏のご遺族の了解のもと、この展覧会のために新たにネガからリプリントされたものだそうだ。
メインの展示室には、1950年前後から70年代くらいまでの作品が並ぶ。この中でも、例えば、2枚のネガを重ねてプリントしたという、頭部の彫像と曲げた鉄板の融合するイメージなどは、もしかすると今回のリプリントのおかげで目にすることができたものかも知れない。
また、このギャラリーには展示室とは別にお茶が飲めるスペースがあり(最初、佐谷氏もそこに腰掛けていらした)、そこには瀧口没後の1980年に大辻氏が撮影した瀧口修造の書斎の写真が展示されている。これらの写真も、いくつかのものは既にどこかで目にしたことがあるはずなのに、主のいない書斎をさまざまな角度から撮影した写真を見つめていると、どれも実に興趣がつきない。加えて、今回は大辻氏の展覧会という思いで見ているせいだろうか、全体の構図や写されたモノとモノとの関係の中に写真家の視線を再認識することになる。
* * *
ところで・・・。
展示されている写真を見ていると、ギャラリーのスタッフの方が話しかけてきて、あれこれと作品について説明をしてくれる。
今まで画廊に行ってこんなふうに積極的に説明を受けたことなどなかったので、最初のうちはスタッフの方のお話を好ましく聞いていたのだが、そのうちに話の流れが、ある人はやんわりと、またある人はズバッと直球で、展示されている写真を買いませんか、という方向になっていくので、思わず苦笑させられた。
確かに、貴重なものなんだろう。遺族の了解のもと、しかるべきプリンターによって忠実に制作されたオリジナル・プリントというのは、今後そう入手できるものではない。写真のことはよく知らないけど、話を聞いているうちに、なんとなくそんな気にさせられてくる。
プリント1枚10万円、フレーム付で12、3万円ほどか。
まあ、買いません。でも一瞬、もうすぐボーナスも出るしな、と考えてしまった。
しかし、世の中には、「版画展やってまーす」とかいう若い女性の甘言につられて店の中に入ったために、実際には二束三文の値打ちしかないような版画(?)を何十万円で買わされてしまったような人がいるでしょう。
そんな人の気持ちが、ちょっと分かったような気がした。
いや、むろん、このギャラリーがそういうやり方の商売をしているということではありませんので、誤解のないように。
ぼくが言いたいのは、まあ、これは美術品に限らないんだけど、商売人と客とが言葉のやり取りを重ねていくなかで、客が何かモノを買ってみようと思い至るまでの心の動きを追体験できた、ということです。大げさかな?
要するに、ギャラリーって、お店なんだよね。本当は。
それって、考えるまでもなく、当たり前のことなんだけど。でも、銀座の画廊に現代美術のインスタレーションを見に行ったって、こっちだって買うつもりはないし、向こうだってどうせ買わないだろうと思っているんだろうし。だから、大抵は、商品だということを意識せずに作品を見ている。
写真の場合は、美術作品よりは、商品として手ごろなんでしょう。だから、商売っ気が表に出てきやすいんだな。今回、こちらがまったくそういうつもりのないところに、不意に商売っ気を出されたことで、改めて画廊というものの本性が分かった。
こんなことを書いて、毎日現場で切った張ったをやっている、プロの美術家やギャラリストは笑っていることでしょう。所詮、シロートの美術ファンのナイーブな言い草だな。
* * *
『第28回オマージュ瀧口修造展「事物と気配−大辻清司の写真」』
会場: ギャラリーパストレイズ
スケジュール: 2006年10月27日 〜 2006年11月18日
住所: 〒103-0027 東京都中央区日本橋2-1-17 丹生ビル2F
電話: 03-3516-3080 ファックス: 03-5299-4164

オープニングにて、自作のかぶりものをかぶる作家の尾崎さん
* * *
『尾崎玄一郎個展 「FORK」』
会場: 村松画廊
スケジュール: 2006年11月13日 〜 2006年11月18日
住所: 〒104-0031 東京都中央区京橋3-7-4 近代ビル1F
電話: 03-3567-5665 ファックス: 03-3567-5665

うちから谷中界隈に行くのに、今までだったら上野駅の公園口から歩いて出かけていた。
そうすると、秋葉原で乗り換えはしなきゃならないし、結構歩くしで、なんとなく腰が重いことだと思っていた。直線距離は近いはずなのに。
過日、ふと思い立って、うちから自転車で出かけてみたら、案外簡単に着いたので、なあんだ、前からこうしていればよかったんだと少し後悔した。
自転車で行くときは、別にどういうルートでもいいんだろうけど、なんとなく吾妻橋で隅田川を渡って、浅草の観音様の裏を通り、ひたすら言問通りを直進、根岸でJRの跨線橋を渡ると、急に周りの空気が一変するような気がして、谷中の界隈になる。
根岸には三平堂の落語会に行くのにときどき出かけていたけど、鶯谷駅で降りて、会が終われば大抵そのまままっすぐ帰るから、根岸という場所をいわば点でしか認識していなかった。それが、ぼくの頭の中で、浅草から根岸、谷中が言問通りという線で繋がったのは、結構新鮮なことだった。
Wikipediaによると、言問通りとは、文京区の本郷弥生交差点から言問橋までに至る道路のことをいうそうだ。地図で見ると、ちょうど鶯谷のあたりが中間地点になるのだろうか。
さて、この「言の聞え」というアート・プロジェクト、「台東・言問通り現代美術展」とうたいつつ、実際には言問通りの西半分しか対象にしてないように見える。
むろん、谷中界隈の古きを残し文化の薫り高い街並みを賞賛するのにやぶさかではありませんが、跨線橋を渡った向こう側、鶯谷駅前のワイザツさもなかなかのものですよ。いや、このあたり、私もまだまだ修行が足りませんが・・・。
それでいて、言問通りからちょっと奥に入ると、週末の観光客相手ではない、生活感のある静かな商店街にぶつかったりして、ほうほう、と思うのです。
要はこの小文で何が言いたかったかというと、言問通りの東半分も忘れないでね、という、日ごと「裏浅草」に心引かれていく墨田区在住者からのささやかなお願いごとなのですよ。
* * *
『サスティナブル・アートプロジェクト2006 台東・言問通り現代美術展 「言の聞え」』
会場: 東京都台東区上野空き地、旧平櫛田中邸、間間間、谷中のお稽古場、旧吉田屋酒店前広場
スケジュール: 2006年10月27日 〜 2006年11月12日

世田谷美術館のエントランス・ホール。
階段の踊り場にスピーカーがしつらえられている。蝋燭の小さな灯りがゆらめく。
(この光景はなぜかコインロッカー室でも小規模に繰り返される)
音的には70分間のアンビエント・ミュージック。
蝋燭の光を見つめていると、まばたきするごとに目蓋の中でいくつもの炎がV字型の光跡を描く。そしてそれを意図的に繰り返す。音の振幅に合わせて燭台ごと左右に揺れ動くように見える時間がある。
展示室に向う階段やチケット売り場というような、いつもならその機能を果たせば足早に通り過ぎるだけの場所が、にわかに秘教の祭壇めいた空間になり、壁に刻まれた字句が自己主張しだすように見える。
結構冷静に、そんな状況の変化を観察していた。
突然、チケットの料金表が床に落ちる。ワイングラスが割れる鋭い音がする。あえて深読みを求めるようなことも起きる。
* * *
『トランス/エントランス vol.3 「沈める晩景−電子音響音楽がひらく世界」』
会場: 世田谷美術館
スケジュール: 2006年11月11日 19:30から
住所: 〒157-0075 東京都世田谷区砧公園1−2
電話: 03-3415-6011

神保町の交差点からほど近いところにあるビルの地下。
まだ若いマスターがひとり。開店してひと月ほどだって。
ビール(バス)、マール(Marc de Bourgogne)、ラム(English harbour)を飲んだ。
マールというのは知らなかった。ワインの絞りかすから造る蒸留酒。要はイタリアのグラッパのようなものだというが。
他に客がいないことをいいことに、バックバーからラムの瓶をいろいろ出してもらって講釈を聞く。English harbourというのはアンティグア島のものだそうだが、プエルトリコ、マルティニック、トリニダード、ガイアナ・・・。酒瓶を見ているだけで気が遠くなりそうな。
しかしバーは気まぐれでしか入らないから、いつまで経っても馴染みの店というのができない。お酒の知識も増えない。ま、もっとも懐の都合もありますが。

目が覚めた。青森のホテルの部屋だ。
時計を見ると、夜中の2時過ぎか。
テレビでは夜回り先生という人がえんえんと語りつづけている。
チャンネルを変えたいのだが、リモコンがどこにも見当たらない。
テレビの脇を見る。ベッドの下を覗き込む。シーツの中をまさぐる。どこにも見当たらない。
例えば、リモコンを持ったまま部屋の外に出て、どこかに置き忘れたまま戻ったか?
あるいは、部屋のドアがロックされていなくて、ぼくが寝込んでいる間に、誰かが忍び込んで、リモコンだけを持って出て行ったか?
そんなわけない。そんなわけない。
とすると、リモコンはどこに消えたのだ。
どこに行ったかはさておき、もしこのままリモコンが出てこなかったら?
黙ってチェックアウトして、後でリモコンがないことが分かったら? 弁償か?
リモコンって、いくらくらいだろう。
というか、いま見当たらないにしても、リモコンは絶対にこの部屋のどこかにあるのだ。だから、弁償させられるということはないはずだ。
では、リモコンはどこに行ったのか?
というようなことを、アルコールの残った頭で、うつらうつらと考えつづけていた。
外が明るくなって、もう一度目が覚めると、リモコンはベッドと壁の隙間に入り込んでいた。いやはや。
おかげで、最初のつもりよりチェックアウトの時間が遅くなった。
最初は、駅前を9時発のバスで青森県立美術館に行こうと思っていたのだけど、ホテルを出たのが9時過ぎ。八甲田丸までよろよろと歩いて、野良ネコに鮭トバをやって写真を撮ったりして時間をつぶした。
10時のバスで美術館に。青森駅に戻ってきたのが3時25分。三内丸山遺跡を見に行く時間はなかった。
3時45分発の特急で秋田に向う。この電車、なんと3両編成。
秋田着は6時17分。ホテルにチェックインして着替えたりしていると、飲みに出るのは7時を回ってしまった。外は雨が降りそう。
* * *
川反通りにある「北洲」。
一瞬入りにくいかなと思うが、中に入ると意外に気安そうな店なので助かる。
実はこの店も居酒屋紀行秋田編の一軒目。こうなったらとことんミーハーで行くぞ。
カウンター席に通される。2脚ずつセットになっているような感じで計6席。私は真ん中。左隣に訳あり風の?カップル。右はひとり飲みの若い男。何かガイドブックを念入りに見ている。夜遊びかな?
まず瓶ビール。芋のこ煮、塩魚汁鍋を頼む。そうかしょっつるというのはこう書くのか。
お通しは浅蜊を煮たもの(だったと思う)。ビールをちびちび飲みながら料理を待つ。見上げると来店した有名人の色紙が並ぶ。私の真上はさだまさしのサイン。番組で太田さんが腰を据えたのは奥に見える座敷だろうか。
芋のこ煮が来る。旨い。鶏で出汁を取っているのか。
地酒の「おためしセット」というのを頼む。両関純米酒「元」、刈穂吟醸酒「六舟」、新政原酒「浥」の三種。

秋田へ行くことになった。
ぼくはこれまで、秋田には一度も行ったことがない。
というか、東北という地域に足を踏み入れたこと自体が、実は一度もない。
秋田での用事は、5日の午後の数時間だけである。
たったこれだけのために、わざわざ東京から時間とお金をかけて秋田に往復するのもバカバカしい。それなら、せっかくの連休でもあるし、いっそのこと、もっと時間とお金をかけて、北東北あたりをうろうろしてやろうと思い立った。
* * *
朝6時東京発の「はやて」で一路八戸へ。在来線特急に乗り換えて青森に着くとまだ11時前。着いてしまうとあっけないもんだ。
さっそく駅前の食堂でウニホタテ丼を食べる。クーポンを出して1200円。これはこんなものなのだろうか。ぼくの後から入ってきたバスガイドか電車のアテンダントみたいな格好をした若い女性が、焼肉定食を頼んでいるのに感心する。
「アウガ」というビルの地下に、新鮮市場というのがあるというので覗くと、鮮魚や塩干物の店舗がぎっしりと並んで壮観だ。地上の雰囲気からは想像がつかない。観光客相手というよりは、かなり本気度が高いと感じた。食堂もあるので、ここで飯を食ってもよかったと思う。しかしこのビルは、地下が魚介類の市場、地上がブティックが入るファッションビル、さらにその上は市立図書館というスゴイ構造になっている。
バスに乗って国際芸術センター青森を見に行く。駅前に戻って3時。
飲みに行くには早いので、ホテルで自転車を借りて、下見ついでに近くを見て回る。
居酒屋紀行の番組で紹介されていた「小政酒道場」は、探すつもりでなかったのに偶然見つけた。開店前の店の前で写真を撮っていると、ご主人が出てきてビックリ。あわてて開店時間などを聞く。
番組では放映されていなかったが、髭コラムを読むと「ふく郎」という店がよさそうだ。探して行くと、今日から三日間、改装のために休業するとのこと。うーん、間が悪いな。残念。しかし答えてくれたご主人らしい人の感じがよく、今度機会があったらぜひ訪れてみたいと思う。
* * *
さて夕刻5時、さっそく「小政酒道場」に出かけた。ぼくが一人目の客のようだ。
ここで食べたものは、刺身盛り合わせ、貝焼き味噌、チカ塩、ミズのおひたし、ホヤ。
お酒は「田酒」、「ん」(というお酒)、「から鬼じ」、「豊盃」を。「豊盃」はもう一杯飲んだんだっけな?
お通しは、野菜や豆腐などを細かい角切りにして味噌で煮たもの。多分これを「けの汁」というのだと思う。旨い。
心なしか刺身の鮪が旨い。貝焼き味噌は初めて食べたけど、もう少し熱々に焼いてあるものかと思っていた。具の帆立も豆腐も温めた程度という感じ。
チカ塩というのは、チカという魚の塩焼き。これも初めて食べる。ていうか、こんな魚知らなかった。調べてみると、どうもワカサギの仲間(あるいはワカサギそのもの?)らしい。ふーん。
ミズという山菜は、これも調べると、ミズナ(京野菜の水菜とは違う)、富山ではヨシナと言われているものと同じ種類なんだな。ヨシナは子供のころ酢の物にしてよく食べさせられたものだ。このミズはヨシナより太くて食べごたえがある。おひたし、とあるけど、汁の中に浮いているようだ。これはこれで旨い。
上に書いたように何種類か地酒を試してみたが、なにぶん味オンチのことゆえ、お酒の味についての感想は省略する。しかしよく分からないのは、この中には冷酒で頼んだものもお燗で頼んだものもあるが、燗酒を注文してから出てくるまでがやたら早いのだ。いや、早いだけならよいのだが、これ、ホントにお燗したの?と思うくらい、どれも超・超ぬる燗である。そうか、やっぱり青森は寒いからお燗もすぐに冷めてしまうんだな。そんなことはあるまい。
店内に貼ってある青森ねぶたのポスターを見ると、田酒の広告が大きく入っている。東京で田酒というお酒のことを知っている人がどれだけいるか知らないが、さすがに、何か大きなイベントのスポンサーになるほどの存在感はないだろう。そんな認識のギャップがなんだか面白い。
そろそろお客さんが込みだしたので、適当なところで腰を上げる。といっても、これだけ飲み食いしたら、やっぱりそれなりのお勘定になった。
* * *
飲み始めが早いので、まだ宵の口である。
この際、番組の内容どおりに店をたどってみようか・・・。
青森編の二軒目はバーだった。遠いと思って自転車の下見もしていなかったのだけど、ほろ酔い気分で歩いているうちに、結局そのあたりに着いてしまった。
が、居酒屋紀行のサイトのプリントアウトを手に行ったり来たり、確かにこのへんだと思うのだが、それらしい店が見当たらない。店が変わってしまったのか。
探しあぐねて、ホテルでもらったガイドマップを出すと、ここから程近いところに、青森屋台村なるものがあるらしい。せっかくだからちょっと覗いてみるかと、あっさり方針変更。
ということで、また2、3分程歩くと、ありました。屋台村が。「さんふり横丁」というらしい。十数軒の小さな店が路地の両側に並んでいる。
しばし迷って、中ほどの店に入った。先客がひとりいる。
夜の街をうろうろして、さすがに体も冷えてきたので、湯豆腐と燗酒を頼む。お酒は菊駒というのにした。お通しはなめこと菊の花のおひたし(菊の字が重なっているけどこれは偶然)。
コの字型のカウンターだけの店。お客が6、7人も座れば一杯になるだろう。
カウンターの中には60代ほどのご主人、その奥の厨房では奥さんらしい人。
ご主人に一軒目の店でかなり飲み食いしてきたことを告げると、何を食べて来たかという。チカ、ミズ、ホヤ・・・、どれを挙げてもそれは時季を外れていると言われるので、なんだか可笑しくなってしまった。
ちょうどぼくが背にしている壁に青森の産品を紹介するポスターが貼ってある。見ると、確かにご主人の言うとおり、あるものは旬が10月までとなっていたり、またあるものは11月からとなっていたり。もしかすると、ちょうど今ごろは端境期にあたるのかもしれない。
陸奥湾の味覚を表すのに、七子八珍、という言い方があるそうだ。七子、というのは名前に「子」がつく魚介類の卵。八珍というのは、その名のとおり八種類の珍味。正直言って、陸奥湾がこんなに豊穣な海だとは知らなかった。
ご主人がガラスケースの中からフジツボを出して手渡してくれた。大きいんだ。フジツボって、こんな大きいんだっけ? 子供のころ、近くの海の岩場で見たのとはだいぶ印象が違う。
と思っていたら、おお、手の中のフジツボが急に動き出したので驚いた。
店が狭いから、と言って、奥さんがわざわざ表を通って入口からお酒を持ってきてくれる。
しかし、これがかなり熱い。二本目につけてくれたのなど、徳利が手で持てないくらい熱い。どうやら電子レンジで温めているようで、その加減がよろしくない。それにしても、さっきの店はお酒がぬるすぎるし、こっちの店は熱すぎるしで、なかなか上手くいかないものだ。
二本目の徳利を空にしたところで、お勘定にしてもらうことにした。実をいうと、もうお腹もいっぱいなのだ。しかし、そういえば、じゃっぱ汁というのをまだ食べていないな・・・。
再び駅周辺に戻り、アウガの前で客引きのオバサンにいい子いるよと腕をつかまれて、こんなところにもこんな人がいるんだと感心しつつ、青森の夜は更けていくわけなのだが。
食べ物ついでにこの写真も上げとくかあ。
BankART Studio NYKで撮った、大野一雄氏百歳のバースデーケーキ。
HAPPY BIRTHDAY OHNO KAZUO '100 Butterflies Cake'って書いてある。
こんな感じで来場者に配られました。
* * *
『大野一雄フェスティバル 2006』
会場: BankART 1929 Yokohama
スケジュール: 2006年10月27日 18:30 から〜 2006年10月29日
住所: 〒231-8315 横浜市中区本町6-50-1
電話: 045-663-2812 ファックス: 045-663-2813
さあ今年もひらきさんの世界味めぐりの時間の時間がやってきましたよー。
まずは韓国ブースのキムチ入りチジミからー。
実はちょっとかじったあとで写真撮ろうと思い立った。
続いてマレーシアのカレー。そういや去年も食べたなあ。
ベトナムのフォーです。フォー!
ってベタ。ライムを絞って食べる。チリソースが案外合う。
台湾のソーセージ。
ソーセージに台湾も何もあるのかよ、って思うがホントに台湾のソーセージらしいから。
缶ビール片手にソーセージ。味は甘い。
中国の水餃子。あなたが思っているとおりの味です。
香港ブースのデザート。寒天にとき卵を流して固めたもの。
何かわからないが歯ごたえのあるものが入っている。何だろう?
ちなみにこういう形のおそうざい、富山県(それともわが新川地区?)では結構普通に食べてますよねー。
* * *
ABKインターナショナル秋祭り
http://blogs.yahoo.co.jp/abkmokuyokai/42919203.html
財団法人アジア学生文化協会・アジア文化会館
http://www.abk.or.jp